大会担当理事よりのお知らせ

第41回英米文化学会大会要項

・目次
  大会日時・開催方法
  大会プログラム
  抄録

英米文化学会

第41回大会
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日時:2023年9月2日(土)3日(日)

会場及び開催方法:就実大学 (岡山市中区西川原1-6-1)
S101 中講堂( S館 101室) & Zoom*

大会当日、発熱、咳、喉の痛みなど体調不良のある方はZOOMからご参加ください。



* ... 就実大学を会場として使用し、同時にオンライン(Zoom)によるハイフレックス開催となります。

ハイフレックスによるオンライン開催(Zoom利用)及び配布資料(ハンドアウト)に関してはこちら

今回の大会では、紙媒体のハンドアウトの配布はありません。ハンドアウトは各自、ダウンロードしてください。

今大会で配布される発表資料を目的以外に使用することは禁止します。
また、 それらを不特定多数の他人とインターネットやSNSにて共有することは著作権法 によって禁止されています。


9月2日(土)
受付開始 <13:00>
開会の辞 <13:30 − 13:40> 英米文化学会会長 君塚 淳一(茨城大学)

研究発表
1. 『火山の下』における山羊
―カブロンおよびスケープゴートとしてのジェフリー・ファーミン―
<13:40−14:10>
発表者 風早 悟史(山口東京理科大学)
司会者 渡辺 浩(就実大学)

2. 文法的連結と意味的連結への気づきのための並べ替えタスク 
―初級学習者のパラグラフ・ライティングの前段階として―
<14:10−14:40> 
発表者 樋口 晶子(四日市大学)
司会者 石川 英司(城西大学)

3. 『大いなる遺産』における語り手ピップの換喩の使用と彼の誤読
<14:40−15:10> 
発表者 水野 隆之(早稲田大学)
司会者 間山 伸(埼玉医科大学)

小休憩 <15:10−15:20>

4. イングランド内乱期の教育パンフレットに見る人文主義の位置づけ
―ペティとミルトンの教育論―
<15:20−15:50> 
発表者 菅野 智城(鶴岡工業高等専門学校)
司会者 閑田 朋子(日本大学)

休憩 <15:50−16:10>

基調講演 <16:10−17:40>
児島虎次郎と大原美術館

講演者 松岡 智子(倉敷芸術科学大学芸術学部教授)
司会者 曽村 充利(法政大学名誉教授)



9月3日(日)
受付開始 <9:30>
研究発表
5. English in the context of Japanese government expectations of increasing foreign worker numbers
<9:40−10:10>
発表者 Tarakanov Igor(大東文化大学)
司会者 北林 光(大東文化大学名誉教授)

6. 『新スター・トレック』におけるシェイクスピア作品の引用
―アンドロイドのデータと『ヘンリー五世』の場合―
<10:10−10:40> 
発表者 佐藤 由美(常葉大学)
司会者 河内 裕二(尚美学園大学)

休憩 <10:40−11:00>

7. 写真家ユージン・スミスのレンズが写すヒューマニズムと抵抗
―描き出された矛盾というネガとポジ―
<11:00−11:30> 
発表者 君塚 淳一(茨城大学)
司会者 永田 喜文(明星大学)


閉会の辞 <11:30−11:40> 英米文化学会副会長 田嶋 倫雄(日本大学)









英米文化学会第41大会抄録



1日目 9月2日

『火山の下』における山羊
―カブロンおよびスケープゴートとしてのジェフリー・ファーミン―


風早 悟史(山口東京理科大学)

 マルカム・ラウリー(Malcolm Lowry, 1909-1957)の小説『火山の下』(Under the Volcano, 1947)における馬は、主人公である在メキシコの元英国領事ジェフリー・ファーミンが抱えた破壊的な衝動の象徴として先行研究ですでに着目されているが、山羊もまた、ジェフリーがよくそれにたとえられる動物として重要である。妻に不倫されたことを知っている彼は、自らを「カブロン」(スペイン語で雄山羊の意であるが、いわゆる「寝取られ亭主」のことも指す)と呼び、友人の前でおどけることもある。一方、スペイン内戦の共和国軍に共感を抱く義弟の代わりになるようにして酒場でファシストらしき男たちに殺される結末部では、そのような道化的な姿から一変し、スケープゴートとしての悲劇性、あるいは聖性をさえ帯びるに至る。本発表では、『火山の下』に頻出する山羊の表象に注目し、ラウリーがそれを通してジェフリーに与えた両義性――カブロンの俗とスケープゴートの聖――について考察する。




文法的連結と意味的連結への気づきのための並べ替えタスク
―初級学習者のパラグラフ・ライティングの前段階として―


樋口 晶子(四日市大学)

 英語でパラグラフを書くことは語彙や文法知識のみならず、文の意図や構成に着目する必要があり、初級者にとって簡単ではない。並べ替えタスクはコミュニカティブ・ライティング指導方法の一つであり、パラグラフ・ライティングの前段階として初級学習者の学習の助けとなる(Johnson, 1981)。
 本研究では、初級者を対象にパラグラフを書く前段階として、文の構成や文法的連結(cohesion)と意味的連結(coherence)に着目させることを目的とする並べ替えタスクを行った。24人の日本人大学生を習熟度別に2グループに分け、カードを並べ替えて物語を再構成するタスクを与え、タスク中に学生は教師とのディスカッションを行った。そして、再構成のプロセスを分析した。学生はまず意味の連結を意識し過ぎる傾向があるものの、教師の助言で文法的意味に着目することができた。助言は上位グループにより有効に働いた。




『大いなる遺産』における語り手ピップの換喩の使用と彼の誤読

水野 隆之(早稲田大学)

 ロマーン・ヤーコブソン(Roman Jakobson, 1896-1982)は失語症患者の言語使用を基に隠喩と換喩の説明を試みたが、チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens, 1812-70)の『大いなる遺産』(Great Expectations, 1860-1)第16章にヤーコブソンを先取りしたかのような場面がある。後頭部を殴打されたことで言葉の自由を失ったジョー夫人は、オーリックを呼び出すために「T」のように見えるものを石板に書く。これはジョー夫人が鍛冶職人のオーリックとハンマーを結びつけたことによる。このオーリックをハンマーにという置き換えは換喩の典型であるが、『大いなる遺産』にはこれ以外にも換喩が多く使われている。本発表では『大いなる遺産』における換喩の用いられ方を考察するとともに、換喩が単なるレトリックに留まらず、物語の進展においても意味を持っているということを語り手ピップによる換喩の使用と誤用、その誤用を導くピップの誤読に着目して論じる。





イングランド内乱期の教育パンフレットに見る人文主義の位置づけ
―ペティとミルトンの教育論―


菅野 智城(鶴岡工業高等専門学校)

 十七世紀中頃のイングランド内乱期に出版された教育パンフレットである、ウィリアム・ぺティ(William Petty,1623-87)の『提言』(The Advice of W.P. to Mr. Samuel Hartlib, 1648)とジョン・ミルトン(John Milton, 1608-74)の『教育論』(Of Education, 1644)を比較検証し、両者間に見られる人文主義へのアプローチの違いについて考察する。『提言』と『教育論』はともに教育改革の推進を目指すハートリブ・サークルから出版されたものの、その教育理念は大きく異なる。階級や性別にこだわらない学校設立を目指すペティの『提言書』は、貧民救済のための実学教育を重視する万人教育論であると言える。一方、男子を対象とするミルトンの『教育論』は国家の指導者育成を目指すエリート教育論であり、教養教育に力点を置くその内容は人文主義的である。これらふたつの教育パンフレットの内容を『ハートリブ書簡』(Hartlib Papers)を援用しつつ検証することで、ペティとミルトン周辺の相関関係とともに両者の人文主義にたいする立場について考察を加え、当時の教育改革における人文主義の位置づけを明らかにする。




基調講演

児島虎次郎と大原美術館

松岡 智子(倉敷芸術科学大学芸術学部教授)


 児島虎次郎(1881-1929)は、「日本の印象派」と称された岡山県高梁市出身の洋画家であると同時に1930年、我が国で最初に設立された、西洋の近代絵画を中心とした本格的なコレクションを持つ西洋美術館である、倉敷の大原美術館の創設に尽力したことで知られている。
 本講演では、画家、美術品収集者、文化交流者として明治、大正、昭和を全力で駆け抜けた児島虎次郎の画業と共に、フランスとベルギーを中心とした3回のヨーロッパ留学中、大原美術館の基礎的コレクションとなった西洋近代絵画・彫刻ならびにオリエントの美術品を収集した活動の軌跡をたどる。
 そして、虎次郎の美術館構想が、同時代のフランスを中心とした西洋の近代美術から出発したのち、ヨーロッパを相対化し文明史的な総合美術館へと発展していったように、彼の目指した芸術も、東洋と西洋が交差する「複眼的視座の具現化」を試みていたことを明らかにするものである。






2日目 9月3日

English in the context of Japanese government expectations of increasing foreign worker numbers

Tarakanov Igor (大東文化大学)

   This presentation explores how the government policy can affect foreigners' usage of English in Japan in order to better illustrate how Japanese government expectations of future trends, should be interpreted, based on the assumption that Japanese government language policy expectations imply the direction of future changes in government policy measures.
   Foreign worker English use data is approximate. It is based on Japanese government statistics, by the Ministry of Health, Labor and Welfare, regarding the nationalities of foreign workers in Japan, and English language content of compulsory education in these countries.
   It can be assumed, that government predictions of significant increases in the foreign worker component of the Japanese workforce are an indication of future changes in policy. Due to increased use of English among foreign workers, policy change, regarding English is also to be expected. An examination of government predictions for 2030 and 2040 will show the expected direction of these policy changes.




『新スター・トレック』におけるシェイクスピア作品の引用
―アンドロイドのデータと『ヘンリー五世』の場合―


佐藤 由美(常葉大学)

 SFドラマ『新スター・トレック(Star Trek: The Next Generation)は、『スター・トレック』シリーズにおいてシェイクスピア作品の引用が頻繁に行われるものの一つである。登場人物の一人、男性型アンドロイドのデータ(Data)は人間に近い存在となることを目指し多様な試みをする。その一環として上司のピカード(Picard)同様シェイクスピア作品を読むが、時として演じることもある。
 本発表では一例として「亡命者」(”The Defector”)を取り上げる。このエピソードは、データが『ヘンリー五世』(Henry V)のタイトルロールを演じている場面から始まる。その後展開するのは、自国が起こそうとしている戦争を防ぐために亡命して地球人に救援を求めるロミュラン人の高官をめぐる物語である。本発表ではデータの演じていた『ヘンリー五世』が本筋とどのように関連しているかを分析する。それを通して、SFドラマを視聴者に紹介する際にシェイクスピア作品が果たしている役割を考察する。



写真家ユージン・スミスのレンズが写すヒューマニズムと抵抗
―描き出された矛盾というネガとポジ―


君塚 淳一 (茨城大学)

 ユージン・スミス(Eugene Smith, 1918-1978)は、第二次世界大戦中の従軍カメラマンに始まり、1950年代から1970年代にかけては、様々な人間を撮ることになる。ジョニー・デップ主演の映画『MINAMATA−ミナマタ』(2020)で知られるように、その後の彼は、水俣でチッソをめぐり被害者側に立ち闘い記録を残した。文学や音楽などにも造詣が深いスミスは、フォトエッセイとして、作品を発表し続けた。だが対象を調べぬいた上でシャッターを切るスタイルには、時間がかかり、結果、彼の評判を落とす原因にもなる。
 本発表では、1950年代の『ピッツバーグ』(Dream Street: Eugene Smith's Pittsburgh Project,2001) や『ジャズ・ロフト』(The Jazz Loft According to W. Eugene Smith,2015)、また1960年代に企業日立から依頼されて撮った『日本、イメージの1章』(Japan: a Chapter of Image,1963)、『MINAMATA』などを中心に、写真家ロバート・フランク(Robert Frank,1924-2019)の『アメリカンズ』(The Americans,1958/1959) から影響を受けて以来、いかにユージン・スミスがその対象の持つ矛盾を写し出そうとしたかを、「ネガとポジ」というテーマから論じたい。











問い合わせ:大会担当理事





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